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解釈とたまに考察と感想

【考察】ニューダンガンロンパV3と首謀者の予測

ニューダンガンロンパV3の重大なネタバレを含みます

 

 

 

 

一周年を過ぎてしまいましたが、ここでV3を首謀者の視点で振り返らさせてください。「ニューダンガンロンパV3」と「首謀者が脳内で描いていたダンガンロンパ」を比較し、首謀者はどうするべきだったかという観点で考察してみました。

サブタイトルは「チームダンガンロンパ大反省会」です。

 

・前提

首謀者があらかじめ行っていた予測上では茶柱と夢野とアンジー、最原、春川、キーボ以外は死ぬ・殺す動機を持っているので必ず死にます。ですが、百田を除いて後半になるほど確実ではなくなっていきます。「茶柱と夢野とアンジー」については3章で説明します。

天海…生存者特典

赤松…デスロード、タイムリミット、最原の存在

東条と星…動機ビデオ

真宮寺…かごのこ

入間…新世界プログラム

ゴン太…王馬の存在

王馬…外の世界の真実

百田…病気

白銀…首謀者

 

後半になればなるほど首謀者の予測から外れそうになるため首謀者自身がテコ入れを行っていきました(カードキー、5章の思い出しライトなど)。

最終的に首謀者の事前の予測通りになったのは、(テコ入れをした)1章と2章と6章時点での生き残りメンバーのみです。

 

江ノ島盾子はその「超高校級の分析力」でほぼ思い通りにコロシアイを運営できますが、白銀はそれには劣ります。なので、コントロールできない一部を偶然や運などのいわば「第三者」に頼る必要がありました。ただし、思い出しライトの記憶によって人を動かすことについては首謀者がテコ入れを行ったと考えます。

首謀者が第三者に頼ったのは以下の通りです。これらも後から詳述します。

 

・赤松の砲丸トリックの成功

・真宮寺がかごのこの準備をしているところに、アンジーが遭遇すること

・王馬がカードキーを奪い取って1人で外の世界の真実を見ること

・最原が5章トリックを解き明かすこと

 

また、江ノ島はアドリブに強い(予定調和を嫌う)ですが、白銀はアドリブにめっぽう弱いです(予定調和を好む)。つまり、江ノ島はアドリブを好んで受け入れますが、白銀は自分の予測と同じようにV3を運営したがります。優等生なんだから、もう…

 

モノクマと首謀者は一応協力関係にありますが、完璧にサポートすることはない関係(モノミと七海のような関係)だと仮定します。また、モノクマは首謀者のサポートを受けることなく活動できます。つまり、「上司」のような立場であるモノクマはその気になればいつでも首謀者を裏切れたのだということです。

 

モノクマはAIであるという確定真実がありますが、彼の性格は過去作に準ずるもので、ダンガンロンパを終わらせないために行動しているものであるとします。つまり、江ノ島盾子のような性格ですが、コロシアイを終わらせない(なるべく予定調和である)ようにしているという矛盾を抱えています。




・1章

プロローグで最原と赤松をロッカーに配置し、天海に生存者特典を与えたことにより、途中まではほぼ完璧に首謀者の予測したシナリオ通り進んでいきました。

 

また、タイムリミットを設定したことも首謀者のシナリオ通りだと考えられます。そもそも赤松のような前向きな人間を投入した時点でコロシアイが起きにくいことは明確ですし、赤松がタイムリミットまでに首謀者(図書室に来た人物)を殺そうとするのは上記の動機によりほぼ確定していました。

 

しかし、赤松が砲丸を使ったトリックを考えた時点で、首謀者はこのトリックの失敗を懸念します。また、タイムリミットを設けて突発的に計画を立てさせたことにより、トリックが失敗した時の対策の準備を急ぐ必要性が出てしまいました。

 

さらに、もしタイムリミットが無かったらここで無理やり自ら天海に手を下したり、赤松に罪を被せたりする必要はありません。赤松を追い詰めるために設定したタイムリミットは、最終的に首謀者自らを追い詰めることになってしまったのです。

 

結果、赤松の砲丸トリックは失敗。自ら手を下し、赤松に罪を被せることになりました。しかし首謀者は、この冤罪事件はのちのち、自分が首謀者であると暴いてもらえるきっかけになると考えます。首謀者である自分の正体を暴いてもらわないと、ダンガンロンパが成立しなくなるからです。だから学級裁判ではトイレに行ったことと、その場所をアピールしたのです。

 

また、モノクマはこの状況をとても不服に思っていたでしょう。4章で「あのバカが天海くんを殺しちゃったからね」のセリフは、首謀者に向けられたものだと考察しています。仮に赤松に向けられていたのだとしたら、「バカ」と言う理由が分からないからです。いつでも裏切れる立場だったモノクマがここで裏切らなかったのは、やはり「コロシアイを盛り上げる」という矛盾を抱えていたからなのです。

 

・2章

2章は、動機ビデオによって確実に死ぬ・殺す動機を与え、ほぼ完璧に首謀者の予測通りになりました。この章では、首謀者の「殺す動機以外にも死ぬ動機を与え、確実にシロ・クロの関係を作る」という、堅実にコロシアイを運営するためのスタンスが明らかになります。

 

首謀者は、星の研究教室・プール・体育館の位置関係などの施設設定や、夢野の研究教室の設備などの設定を自ら行うことにより、狙ったメンバーに確実にコロシアイをさせるための空間を提供しています。そうすることにより、首謀者は円滑にコロシアイを運営できるほか、犯人・被害者だけでなく、使われる凶器や殺人方法までもをあらかじめ予測することができます。

 

このため、V3においては被害者・加害者関係なく「誰が死ぬか」がエリアが開放されるごとに予想できるようになっていました。研究教室が出る順番もその一つと言えますし、3階が開放された瞬間に(アンジーちゃん絶対死ぬやん…)と思ったのも私だけではないはずです

 

また、この章で唯一予測から外れたのは「昆虫でなごもう会」の開催です。しかしこの会は、夜時間の皆のアリバイを複雑にし、裁判を盛り上げてくれました。首謀者にとっては嬉しい予測外れだったことでしょう。

 

 

・3章

例のソルトをはじめ、エンタメ・箸休め扱いされがちな3章ですが、個人的に3章はV3のターニングポイントになっていると思います。これが言いたかったからこのブログを開設したと言っても過言ではありません。

 

3章は、首謀者の予測というよりは理想、願望通りとなった章です。安定した運営よりも欲、つまり「ダンガンロンパの模倣」を狙ったことにより、最終的にダンガンロンパを終わらせてしまうことになります。

 

江ノ島盾子の場合はアドリブに強いため、そのようなことが許されます。しかし、白銀は江ノ島ほど首謀者として完成していません。江ノ島以外の人物が首謀者・黒幕を行う時は、必ずあらかじめ予測やシナリオを建設し、それに準じてコロシアイを運営するべきなのです。

 

今まで「死ぬ・殺す動機」を確実に与えることによって自分の予測通りにコロシアイを運営していった首謀者ですが、今回の動機である屍者の書は、真宮寺にかごのこ(女性を1人殺す)をさせるためのものです。真宮寺に植え付けた記憶と、屍者の書とかごのこが出たことによって、真宮寺が女性を殺す事は確実なものとなりました。

 

よく存在の意味などを考察されがちな屍者の書ですが、私は屍者の書の効果である死者の蘇りには大した意味は無いと考えています。むしろ、元から蘇りの儀式を行う前に殺人を起こさせ、裁判後に回収する予定だったのではないでしょうか。

 

「実は皆生きているかもしれない」と言うアンジーに、真宮寺が「じゃあかごのこで死者を呼び出してみよう」と言ってもおかしくありません。かごのこを行えるセットがあるのなら尚更です。かごのこは、真宮寺にとっては凶器と同じようなものだからです。元から真宮寺もそうする予定だったのでしょう。だから、いつでもかごのこを行えるように、茶柱を殺す前からシーソートリックの準備をしていたのです。

 

また、今回は首謀者は被害者までは予測していません。少なくとも、かごのこによって茶柱・夢野・アンジー(生存者の中から入間・春川・首謀者を除いた女性)の中から誰か1人死ぬということが確定しているだけです。さらに、もう1人確実に殺させる・死なせる動機を首謀者は用意出来ていませんでした。かごのこの場合は2度行うことはまずないからです。元々3章の被害者は1人の予定だったともとらえられます。

 

そこで頼ったのが、「かごのこの準備をしている真宮寺とアンジーが遭遇する」という偶然です。模倣犯である首謀者は、この「3章」と呼ばれるタイミングで、シナリオ上に無い被害者をもう1人出したかったのです。2人犠牲者が出るということがシナリオに無かったのは、動機が用意されていない時点で明らかです。また、2人目の犠牲者の有無を第三者に頼ることによって、2‐3章の「口封じ」による殺人の模倣ができます。

 

しかし、これはあくまで模倣です。ダンガンロンパの模倣をしたがっているのは首謀者のみなので、首謀者はモノクマやチームダンガンロンパを無視してこの模倣を実行したと思われます。

 

実際にその偶然を起こさせるために、首謀者はかごのこを行える場所と火がある場所を一致させ、3階にあるものだけで密室トリックを作成できるようにしました。(才囚学園の設計は基本的にチームダンガンロンパが行っていますが、首謀者である白銀もそれに多少の口出しが出来たと考察しています)そして、実際にその偶然は起きたのです。そして、かごのこを行うチャンスを得た真宮寺はかごのこを行い、2人目の犠牲者を出しました。

 

しかし、アンジーと茶柱の死は、夢野を大きく成長させすぎてしまいました。もしかごのこのみ行っていたならば、口寄せはV3と同じように茶柱が行っていたでしょう。本来の犠牲者は茶柱のみだったのです。もしアンジーが生き残っていたら夢野はずっとアンジーに依存したまま成長しなかったでしょう。

 

また、4章の予測も困難にしています。もしアンジーが生き残っていたら、入間は生徒会で場をかき回したアンジーを狙っていたでしょう。しかしアンジーは死に、入間は王馬を狙いました。このことによって、4章の事件へ王馬が介入するチャンスを与えて首謀者の座を乗っ取られ、5章終了までほぼ予測することを許されなかったのです。

 

 

・4章

4章についての事前予測は、もはや「入間が死ぬ」という事だけでした。アンジーが死に、入間が標的を王馬にしてしまったからです。アンジーが死んだことにより、入間が狙うであろう人物はもう王馬しかいません。当然首謀者は、植え付けた設定上、彼がただで死ぬ人間ではないと考えます。

 

そこで、「王馬がカードキーを奪い取って1人で外の世界の真実を見る」という偶然に期待し、彼を先に絶望させておこうとしました。絶望させる=行動不能にするという事です。そもそも、あのカードキーは誰か1人にだけ先に外の世界の真実を見せておくためのものだったと考えられます。あのタイミングで全員に外の世界の真実を見せるメリットが無いからです。

 

また、これには模倣犯としての欲も含まれていました。「トリックスター枠の人間に、先に真実(嘘だったけど)の一部を伝える」という事は、2‐4章に対応しています。つむぎちゃんはスーダンが好きだったのかな?

 

しかし、王馬は外の世界の真実を首謀者の嘘だと考え、自らの推理を展開させました。その推理はカメラには映らないものなので、首謀者は真実に絶望しなかった事は把握できますが、王馬がそこから推理し、しかもそれが大体当たっていることは知る由もありません。よって、ここからは首謀者の予測は通用しなくなり、本編のような王馬の独壇場となってしまいます。

 

王馬が推理した事は、「外の世界は滅びてなんかいない。必ずこのコロシアイは誰かに見せている」という事です。この予測外の推理は、王馬を「超高校級の総統」という、首謀者目線で物事を考えられる才能にしてしまった首謀者の失敗とも言えます。

 

ここから彼は、コロシアイに勝利する条件を「視聴者が運営側に愛想をつかす」、つまり「運営側の不祥事を作る」もしくは「コロシアイが起こらない状況を作る」ことであるとします。ここについては5章で詳述します。

 

そのため、入間が自分を狙っていると知ったら、勝利条件である「コロシアイが起こらない状況を作る」を達成するための計画を実行するチャンスだと思います。それが「首謀者の座を乗っ取る」という事だったのです。

 

元々、彼の勝利条件の中に「コロシアイが起こらない状況を作る」は1章のタイムリミット前からありました。「このせかいはおうまこきちのもの」がかなり前からあったのもそのためです。彼の中では、「コロシアイが起こらない状況を作る」=「自分が首謀者を騙る」だったのです。

 

首謀者が自分の予測を確定させたのは、王馬がモノクマと交渉した時です。もっとも、このタイミングで予測を確定させるのは遅すぎるので、首謀者はほぼ何もすることができません。しかも、首謀者の予測は「入間が返り討ちにされる」ことと「王馬は自ら手を下さない」ということだけでした。

 

その時点での入間・王馬以外の生き残りの中で、王馬に唆されて人を殺す人物が思い浮かばなかったからと言えるでしょう。唯一騙されそうなゴン太も、V3では意識にも何らかの障害が出たからという理由(本当かどうかは分からない)で入間を殺したので、首謀者はそこまで予測できません。意識に障害が出て人を殺すのなら、変な話誰でもクロになる可能性があったからです。

 

首謀者の願望とすれば、ゴン太がクロになって欲しかったでしょう。実際ゴン太が死ぬ理由として、首謀者は「王馬に騙されること」を設定していました。もしその設定が4章(筋肉枠)というタイミングで発揮されるなら、これ以上に良い事は無いでしょう。

 

そして、実際にゴン太が入間を殺したわけですが、裁判の主導権はゴン太にはありません。プログラム世界での記憶を無くしているからです。もっとも、記憶があったとしても王馬に「余計な事は喋るな」と言われていたでしょうが…。

 

首謀者は、ここでもっと早く違和感に気づくべきでした。今回の学級裁判は、王馬がヘイトを集め、最原と百田を切り離すためのものになっていたのです。王馬は、この二つの目的をすべてこの学級裁判で達成しています。

 

一見最原・百田・王馬が順番に主導権を握っているように見えますが、実際は王馬は最原に主導権を握らせようとしています。つまり、実質的な主導権はすべて王馬が握っていたのです。このタイミングで気づけなかったので、のちのちの対策が雑なものになってしまい、なにより王馬は「首謀者を騙る」という目的を達成してしまいました。

 

 

・5章

5章においては、もし最原がいなかったらここでダンガンロンパは終わっていたでしょう。この章に限っては、モノクマと首謀者は「真実を知らない」という意味では対等の立場にあります。

 

「王馬が絶望の残党である」という思い出しライトを使うまで、主導権はすべて王馬が握っています。百田がモノクマと戦おうといったタイミングで適切にエレクトハンマーを渡し、自然にモノクマと戦うことを避けさせたのは、彼なりの優しさと言えます。戦っても無駄だという事を、王馬は視聴者の存在から推理しています。

 

そして、皆に外の世界の真実を見せます。外の世界の真実が使われるのはここで3回目ですが、やっと全員に明かされます。ここで王馬は、自分の推理を元に真実を明かし、自分が首謀者だと言います。首謀者は、やっと王馬に外の世界の真実を見せた事を後悔したことでしょう。

 

何より、王馬の推理が的を得ていたということに驚いたはずです。元々この真実(嘘ですけど)は、おそらく1‐6章のように学級裁判中に明かされるものの予定でした。自分が皆を絶望させるための材料を、彼に使われてしまったのです。しかも、この時点でもまだ首謀者は王馬が視聴者の存在に勘づいていることに気づいていません。

 

王馬がコロシアイに飽きたと言い、こう着状態になってしまったV3。このままでは、ダンガンロンパは終わりかねません。首謀者に残された最後の手段は、皆に希望を与える思い出しライトを作る事でした。王馬と百田という嘘のエキスパートがいない今、その最終兵器を使うことが許されたのです。

 

そしてその思い出しライトを使った最原たちは、首謀者の予測通り王馬に立ち向かうことを決意します。思い出しライトと王馬の話にはいくつか矛盾がありますが、「嘘つき」である王馬小吉の話と(現時点で)自分の記憶を呼び起こすものである思い出しライトのどちらを彼らが信じるかなどは、言うまでもありません。

 

首謀者が希望を与えるなんて、ダンガンロンパではあるまじき行為です。しかし、この思い出しライトによって、やっとコロシアイのこう着状態を打ち破ることができます。実際、春川は思い出しライトを使ったその日の夜に王馬を殺しに行きます。首謀者は、なるべく単純なトリック・理由で王馬が殺される事を望んでいました。その目的にあたって、春川はうってつけの人物だったと言えます。

 

ですが、百田が王馬を庇ったことにより、春川の計画は失敗し、解毒薬も王馬に奪われてしまいました。しかし王馬にとっては、この一連の流れを春川、そして首謀者に見せることが重要だったのです。王馬は、春川が格納庫に来た時点で、元々の「コロシアイが起こらない状況を作る」計画から「運営側の不祥事を作る」ための計画に切り替えました。

 

元々王馬は、もしコロシアイが起こらない状況になった時、首謀者が何もしないわけがないと考えていました。そして、もし自分を殺そうとする者が現れたときのために、自分をシロ、百田をクロとした殺人計画を立てていました。この計画を実行できるのは、嘘のエキスパートである王馬と百田しかいなかったのです。

 

そして、計画を実行しました。解毒薬を飲むフリをして春川を、エレクトボムを使ったことにより首謀者を、死体をプレスしたことにより最原たちを欺きました。この事件の解決は、超高校級の探偵である最原にしかできないようになっていました。クロもシロも分からない首謀者とモノクマは、そんな彼に5章の結末を委ねるしかなかったのです。

 

そのため、もし最原が春川を犯人としていたら、モノクマは春川をおしおきしていたこたでしょう。そもそも、結果的な死因がプレスか毒か分からないため、この議論は突き進めていくと誰が犯人か分からなくなってしまいます。もともと病気で死ぬ予定だった百田をクロとしたのは、首謀者にとっては良い「落としどころ」でした。

 

しかし、首謀者が安堵するもつかの間、今度はキーボのアンテナが折れてしまいます。これにより、V3における「最後に生存者を絶望させる材料」として、この世界がフィクションであるという事を使わざるを得なくなりました。詳しくはこちらをご覧ください。

 

bunbunv3.hatenablog.com

 

6章

キーボが学園を壊している間、首謀者は必死で裁判の展開を考えていました。キーボによって全ての部屋に入れるようになったので、自分が首謀者だと暴かれるきっかけは、1章事件の真犯人であるということに決定していたからです。裁判が開かれることはほぼ明確でした。

 

また、5章で浴びせた思い出しライトにより、この世界がフィクションかもしれないと思わせる材料もありました。あとは、首謀者である自分の口から真実か嘘か分からないような真実を言い、キーボ(視聴者)以外の全員を絶望させるだけです。

 

首謀者の予測では、キーボが希望を持つきっかけをつくり、そこでさらに成長した最原が改めて希望を持って絶望である自分を論破してくれることになっていました。もしそうなっておしおきを受けることになったとしたら、首謀者は満面の笑みでおしおきを受けていたでしょう。ダンガンロンパが続く事が確定したのですから。

 

なので、6章は最原が「僕は希望を否定する」と言い始めるまでは、首謀者の直前の予測通り進んでいきました。最原が希望を否定してしまったおかげで、最終的にはダンガンロンパは終わりを迎えてしまいます。

 

最原が希望を否定した原因として、最原の初期設定を弱くしすぎたことが挙げられます。初期設定が弱いということは、それだけ成長する機会が多いということです。正攻法で首謀者に挑んだ赤松や天海、嘘を使って首謀者を騙そうとした百田や王馬の失敗から成長した最原は、ダンガンロンパにおける「別解」を見つけました。

 

その別解こそが、希望でも絶望でもない終わりだったのです。最原は、赤松や天海のように首謀者を相手にせず、百田や王馬のように嘘で丸め込むでもなく、真実で世界と戦いました。ダンガンロンパを終わらせるには、視聴者が納得する形(真実)で議論を展開させる必要があったのです。

 

首謀者を相手にしたらV3は終わりますが、ダンガンロンパは終わりません。また、「例えフィクションだったとしても、この胸の痛みは本物だ」という真実で視聴者を説得させないと、第三者である視聴者を納得させることはできません。

 

模倣犯である首謀者にとって、ダンガンロンパが終わることはチームダンガンロンパとしても、白銀つむぎとしても最悪の結末でした。そしてダンガンロンパは、「視聴者が愛想をつかす」ことによって終焉を迎えます。その愛想をつかした理由は、王馬が考えていた運営側の不祥事や、コロシアイの起きない状況でもありませんでした。

 

・首謀者と黒幕の失敗

今更ですが、ここで言う「首謀者」とは白銀を、「黒幕」とはチームダンガンロンパを指しています。首謀者の失敗は主に実行犯として、黒幕の失敗は主にコロシアイ会場のセッティングなどの事前準備についてです。今回はおおまかに、首謀者の失敗と黒幕の失敗で一番大きいものを1つずつ挙げます。

 

首謀者の失敗:模倣犯としての欲を出しすぎた

正直、これが実行犯が失敗した八割の理由といってもいいでしょう。アンジーが死んで4章の予測が困難になったのも、王馬に首謀者を騙らせる隙を作ったのも、要所要所でダンガンロンパの模倣を狙ったからです。

 

「アンジーと真宮寺が遭遇する」という偶然を起こしてしまったせいで、アンジーが死ぬ→入間がターゲットを王馬にする→王馬が4章事件に関わる→入間とゴン太を使ってヘイトを集められる→首謀者を騙られる→最原がこの世界の真実や「別解」に気づくという負のスパイラルが起こってしまいました。

 

江ノ島以外の人物がコロシアイを運営するとき、「事前の予測通りにコロシアイを運営する」ということはとても重要です。「超高校級の分析力」のなかった首謀者は、自分の予測を崩すことによって、自分の首を絞めていたのです。

 

黒幕の失敗:行動理念の予測が難しい「トリックスター枠」の投入

トリックスター枠は公式用語ではありませんが、ここでは1の十神、2の狛枝、V3の王馬のことを指します。

 

今までのトリックスター枠は、例えば狛枝なら「希望」を行動理念とし、また十神は「コロシアイに勝つ」ことでしたが、最終的には苗木と共に正攻法でコロシアイを終わらせるために行動しました。この2人に関しては行動理念が単純かつわかりやすいので、何をするか簡単に予測できます。

 

しかし王馬の場合、行動理念は「コロシアイに勝つ」ことですが、彼は「嘘つき」という設定があるうえ、誰よりも早くV3世界について考えられる機会が与えられます。十神は嘘つきではありませんでしたし、トリックスターとしての役目も他二人に比べれば薄めでした。この差が、彼の行動を読めないものとしていたのです。

 

まず、嘘つきという設定によって、「コロシアイに勝つ」というのがどういう意味で勝つことなのか分からなくなります。そもそも、もし彼の言う「コロシアイに勝つ」の意味が分かっていたのなら、首謀者は王馬が行動し始めた時点(4章)でそれを全力で止めているはずです。彼がもしコロシアイに勝つ、つまりコロシアイを終わらせてしまったら、V3は盛り上がらなくなってしまうからです。

 

今までのトリックスター枠に対して、黒幕は特に何もしていませんでした(強いていえば2‐4章)。今回も今までと同じように、特に対策を行っていなかったのでしょう。才能や性質だけ見れば今までより強い警戒が必要なのに首謀者がそれをしなかったのは、彼に「臆病者」などの設定をしていたせいだからとも考えられます。

 

本来トリックスター枠は、コロシアイを盛り上げるために投入されるものです。実際、1の十神や2の狛枝の存在は黒幕にとってはコロシアイはを彩った存在でしょう。しかし彼らは、自分の理念にそぐわないものを徹底的に排除しようとします(2‐4章以降の日向に対する狛枝など)。王馬の元の性質は「エンターテイナー」です。彼にとってこのコロシアイがツマラナイものだったら、それは排除の対象だったと言えるでしょう。

 

 

今回はV3全体のまとめ、というよりは黒幕や首謀者よりの考察になりました。かなり他の人の影響を受けていると思うので今(もしかして:〇〇さん)と思っている方もいると思います。すみません。ぜひその方の考察も読み直してみてください。